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百人一首現代語訳 感想10

百人一首現代語訳 感想の注意書きです。

yuifall.hatenablog.com

四十一・恋すてふわが名はまだき立ちにけり人知れずこそ思ひそめしか

拾遺和歌集 巻一一・恋一・六二一 詞書「天暦御時の歌合」 壬生忠見

 

私が恋をしているという噂が早くも立ってしまった。

ひそかに思いはじめたばかりのところなのに。

 

私が恋をしているという うわさ

早くも立ってしまって

ああ!

ひと知れず ひそかに

恋しはじめたばかりなのに

 

さ・え・ら書房 『口語訳詩で味わう百人一首』 佐佐木幸綱

 

あの人が 好きだとみんなに ばれちゃった

 誰にも内緒で 恋していたのに

 

講談社 『百人一首がよくわかる』 橋本治

 

春の手でしらしら明けの空に名を書きちらされて――おれは、おまえが (佐藤弓生

 

幻戯書房 『トリビュート×百人一首』)

 

 どうしても「忍ぶれど」の歌と一緒に語られてしまう運命の「恋すてふ」です。

 佐藤弓生も「忍ぶれど」は「忍ぶれど色に出でにけりわが恋は」の倒置法に、「恋すてふ」は「こそ~しか」という係り結びに余韻を感じる、と書いていましたが、私もそう思います。そして、確かにとっさに口に出しやすいのは「忍ぶれど」かなーって思うけど、個人的には「恋すてふ」の歌の係り結びに心惹かれるんですよねー。普段使わないからだろうな。

 

 佐藤弓生の2首は、「ルビー」(わたし)と「しらしら」(おれ)で対比する構造で作られています。この場合、「忍ぶれど」の歌は「ルビーの色に変わる」の部分が、赤いイメージと「色に出でにけり」の「色」が重ねられていて、ここに重点があるのかなって感じました。「恋すてふ」の方は、重点がどこにあるのか掴みにくく…。白がテーマなんだから「しらしら」の周辺かなって思って読んだのですが、どちらかというと結句の「おれは、おまえが」の方な感じもします。もともとの「恋すてふ」も、「こそ思ひそめしか」と結句に重心があったので。

 佐藤弓生の2首だったら「忍ぶれど」の圧勝だなーって思ったのですがいかがでしょうか。「白」の方も、「一夜明けたら知れわたっていた」というテーマが面白いなって思ったのですが、やっぱり「ルビーの色に変わる」のインパクトが強いし、想像上の見た目のヴィジュアルも美しいしなー。

 

 私は「書きちらした」方の立場で作ってみました。

 

 

まなざしであなたが恋を語るなら指で壊すわ、わたしを見てよ (yuifall)