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02x11 - 2πR 感想

 POI感想の注意書きです。

yuifall.hatenablog.com

 リースが捕まって、どうなる!?と思わせておいてE11は完全にフィンチ回です。フィンチが活躍するエピソード好きなんで、E11, E12はめちゃ熱いですね。その後のE13はまたR&Fに萌え滾りますので、このあたりは本当に見どころが多いな!

 画面は派手じゃないけど、すごく好きな回です。ちなみにPOIの全エピソードで視聴率が最高だったのはこの回だとか。これは、リースどうなる!?って期待がそうさせたのか、単純にこの話がとてもよかったからなのか、どっちなんでしょうね。フィンチLOVEなんで嬉しい反面、リース君ほとんど出てこない回が最高視聴率って…みたいな複雑な気持ちもあり…。

 日本語タイトルは「完全なる方程式」でしたが、原題は2πRでした。円周を求める公式ですね。この回は原題の方がずっといいなあ。

 

 冒頭、リースはライカーズ刑務所にいます。独房になぜか携帯が…。「あんたが政府より上手だってことは分かってた」とリース。「72時間以内に脱出させる」とフィンチ。今回はとにかくフィンチがめちゃくちゃかっこいい♡

 

 さて、リースがいなくても番号は止まりません。「どうにかするよ」とフィンチは臨時の数学教師を装って高校に潜入します。

 それにしても1から100までの足し算なんて2秒でできそうなもんですが、高校のレベル低すぎでは…。ケイレブ君、掃き溜めに鶴だな。フィンチは「今の子供たちはメール中毒だ」と言いますが、これは2012年です。今はどうなってんだろうね。SNS中毒かな。

 

 授業中、生徒に「πなんて何の役に立つんですか~?」と聞かれたシーン。

 

Let me show you.

教えよう

The ratio of the circumference of a circle to its diameter.

πは円の直径に対する円周の長さの比率だ

And this is just the beginning.

そしてこれはただの始まりにすぎない。

It keeps on going. Forever. Without ever repeating.

これはどこまでも続く。永遠に。決して繰り返すことはない。

Which means that contained within this string of decimals is every single other number.

これは、この小数の連なりの中にあらゆる数列が含まれていることを意味する

Your birth date, combination to your locker, your social security number.

君たちの誕生日、ロッカーの暗証番号、君たちの社会保障番号

It's all in there somewhere.

全てはこのどこかに存在する

And if you convert these decimals into letters, you would have every word that ever existed in every possible combination.

そしてもしこれらの小数を文字に変換したら、全ての可能な組み合わせの中に今までに存在したあらゆる言葉を見るだろう

The first syllable you spoke as a baby, the name of your latest crush, your entire life story from beginning to end.

赤ちゃんの頃初めて口にした音節、君たちが今思いを寄せている相手の名前、君たちの全ての人生の物語が、はじめから終わりまで

Everything we ever say or do...

我々が口にしたり、行ったりすること全て

All of the world's infinite possibilities rest within this one simple circle.

この一つの単純な円の中に世界中の果てしない可能性が含まれている

Now what you do with that information...

その情報をどうするか

What it's good for...

どう役立てるか

Well, that would be up to you.

それは君たち次第だ

 

 スウィフト先生かっこいいなー。数学を「何の役に立つの?」とか言う奴、高層ビルに入ったりスマホいじったり薬飲んだりしないでほしいですね!と私なら言ってしまいそうだけどスウィフト先生はもっとスマートです。

 ちなみにSwiftはアマツバメという鳥の名前でもあるそうですが、同時にプログラム言語の名前の一つでもあるそうで、ダブル・ミーニングかぁ、芸細かいな、と思った。

 

 ケイレブは才能を隠して平凡を装っている17歳。フィンチはケイレブが落とした手書きのコードを一目見て、加害者であれ被害者であれ、彼をどうにか救いたいと心に決めます。

 

You dropped this yesterday.

君は昨日これを落とした

You really got to stop going through the trash, Mr. Swift.

スウィフト先生、あなたは本当にゴミを漁るのをやめた方がいい

You know, I used to do a little coding myself.

えーと、私は自分でも少しコードを書いていたことがある

That's an elegant string you have.

君の持っているコードは優雅だね

But it occurs to me that if you want to implement multi-threading, you'd do better to use atomic variables.

しかし、もしマルチスレッドを埋め込みたいなら、原子変数を使う方がいいように思われるよ

Just a thought.

ただの考えだが

Wait, that... That works.

待ってください、それは、確かにそうですね

Yes, that's why I suggested it.

そう、だから私はそれを示唆したんだ

Uh, thanks.

あー、ありがとうございます

 

 ケイレブ君との会話、全体的に好き。ケイレブ君もフィンチのファンになっちゃうよねー(実際なってるけど)。

 2年前に兄が不審な事故死をしていたりクラスメートが麻薬の売人だったりケイレブのコードをIT担当の先生が友人に売ろうとしてたり、ケイレブは様々な事件の渦中にいて、一体何絡みで「番号」が出たのかなかなかつかめません。フィンチはファスコに協力してもらいながらリースなしでもなんとかケイレブを助けようとします。

 

 一方カーターはライカーズに拘留されたリースのDNAをすり替えちゃうぞ!別人のDNAサンプルを採取する時、「ヨーロッパ系、身長6.0-6.4ft、目はブルー、髪はブラウン…」みたいに色々な特徴が書かれた指示がフィンチからカーターに届くけど、この時「避けるべき病気;cystic fibrosis, heredity hemochromatosis」みたいに色々書かれてて、これらはアングロサクソン系だと割とメジャーな遺伝病っぽいですね。日本人だとどんな感じになるんだろう。色盲とか?アルコールに弱い、とかはありそう。この時のカーター、めっちゃやり手ですね。バーでspecificな男を狙い撃ちです。これはいい女じゃないとできない手口…。ゾーイにやらせても面白かっただろうなー。

 そんで採ったDNAをすり替えに行きますが、まだ解析してなかったんかい、ってなったわ。実際はこんなん無理でしょうけどね…。検体すり替えとか…。普通にフィンチがハッキングして指紋とDNAのデータを書き換えた方が早かったんじゃ。

 

 フィンチはリースなしでも番号対象者を守れる!とがんばりますが、尾行中に相手を見失ったりしていてかわいいです。

 

Well, that's a problem, Detective, because I lost Caleb.

あー、そこが問題だよ、刑事さん。なぜなら、私はケイレブを見失った

He got on a city bus, and it left before I could catch up.

彼は市バスに乗って、私が追いつく前に出発してしまった

You're kidding me.

冗談だろ?

May I remind you that of the many things I'm equipped to do, pursuit would not be chief among them.

私には様々な能力があることを君に思い出させなくてはならないようだが、追跡はそれらの中の主たるものではないな

 

 いつもながらこの喋り方大好き。

 

 ファスコと鉄道警察官の会話、そしてフィンチとクリス(ケイレブのIT担当教師)の会話で、何度も「あと半年で18歳」というキーワードが繰り返されます。そして「17-6-21」というファイル名を聞いて、ケイレブがどこで何をしようとしているのかに気づくフィンチ…。

 

This seat taken?

この席は空いているかね?

What are you doing here?

あなたはここで何をしているんですか?

You're so smart, Caleb. Ask me something you don't know.

君はとても賢いよ、ケイレブ。分からないことだけを聞きなさい

The thing about being reckless...Taking chances...

無謀であること…、危険な賭けに出ること、それについての事

Is that you make a lot of mistakes, cause a lot of grief.

それによって君はたくさんの間違いを犯し、多くの悲しみを引き起こす

Gonna start lecturing me on mistakes?

過ちについての講義を始めるつもりですか?

How I need to live and learn? Move on? That's really inspiring, Mr. Swift.

僕がどう生きて学ぶべきか?前向きに?それはとても素晴らしいですね、スウィフト先生

I'd stand up on my desk and clap for you.

僕は机の上に立ち上がってあなたに拍手したい

But...

だけど…

No.

違う

Your mistakes, like mine, are part of who you are now.

君の過ちは、私の過ちがそうであるように、今君という人格の一部になっている

You can't move on from that.

君はそれを置いて前に進むことはできない

Believe me. I've made a sizable number.

信じてほしい。私もかなりの数の間違いを犯してきた

But... Sometimes your mistakes can surprise you.

しかし…、時に君の過ちは君を驚かせる

My biggest mistake, for instance...Brought me here.

私の最大の過ちが、例えば…、私をここに導いた

At exactly this moment...When you might need some help.

まさにこの瞬間に…、君が助けを求めている時に

17 years, 6 months and 21 days into your life.

今、君は17歳、6カ月、21日

The age at which your brother died.

君のお兄さんが亡くなったその年齢だ

The age you've chosen to end your life too. 17-6-21.

君が君の人生の終わりとして選んだ年齢でもある。17-6-21

So, you see... Maybe you and I are connected.

その、分かるように…、おそらく君と私は似ているんだ

Two reckless people.

2人の無謀な人間だ

Yeah? Then what's the use?

そうですか?それでは、何の役に立つんですか?

We're just gonna keep breaking things...Over and over.

僕たちは単に何かをダメにし続けている…、何度も何度も

Why not save everyone the grief?

なぜみんなの悲しみを減らしてあげないんですか?

The thing about the world is that it doesn't have any extra pieces.

世界についての話だが、そこには余分なピースなどない

It's like pi. It contains everything.

まるでπのように、そこには全てが含まれている

You remove a single piece... No circle.

たった一つでも失われれば、円を描くことはできない

Your recklessness, your mistakes, are the reason why, when they say "you can't change the world," you won't listen.

君の無謀さ、君の過ち、それらは誰かが「お前に世界は変えられない」と言った時、それを聞かない理由になる

The world is better off with both of us in it, Caleb, rather than the alternative.

世界は私たち2人がいた方がより良いものになるんだ、ケイレブ、代替品よりも

Yeah? You sure about that?

そうですか?確信がありますか?

Yes, and your mom is better off with you in it.

そうだ、それに君のお母さんも、君がいた方がいい

If you think money can replace you...You haven't seen the whole equation.

もし金銭が君に置き換えられると思っているのなら、君にはまだ方程式の全貌が見えていない

Take it from someone who thought that leaving would make it easier on everyone...

去ることが皆にとってよりよい事だと考えていた人間の言葉を信じてほしい

And then learned otherwise.

でも、のちにそうでないと学んだ

 

 「君が自分の人生を終わらせる年齢だ。17-6-21」とフィンチが告げた時、ケイレブの頬を涙が一筋伝って、鳥肌立った。なんてすごい役者さんなんだ。。

 この会話、字幕で見てた時は(吹替もそうなってた)ケイレブは「僕は余分な人間なんです。いつも全て台無しにする」って言ってフィンチが「余分なものなどない」って返すのですが、実際はフィンチが「私たちは似ているんだ。無謀な2人だな」って言ったことに対して、ケイレブは「それじゃあ僕たちは一体何の役に立つのか?いつもぶち壊しにする。皆を悲しませないためには消えた方がいい」って答えていて、ようやくこの会話の意味が分かったような気がしました。

 まず、「僕は」じゃなくて「僕たちは」と言ってます。つまり、自分だけじゃなくてフィンチも、「無謀な」人間であれば「いつもぶち壊しにする」し、「いない方がいいんだ」と。これはリースが捕まった後の話だから余計に胸が痛い言葉ですね。フィンチもずっと自分自身に問いかけ続けていたことだったはず。「最大の過ち」であるマシンを開発したのは正しかったのか、それでネイサン、グレース、リースの運命を狂わせたことは正しかったのか、「仕事」にリースを巻き込んだことは正しかったのか。自分はいない方がいいのではないのか。S1E2で「消えてしまいたいと思う気持ちも分かる」とテレサに言ってたよね。

 それに、ケイレブはここで「何の役に立つのか」という言い方をしています。これは、数学の授業でπについてフィンチが尋ねられた言葉と同じです。だからこそ、この後πに関連した「この世に不要なものなどない」って言葉が出てくるのか、とようやく腑に落ちた。

 

 最後にフィンチは「自分も、自分がいないほうが皆のためだと考えていたがそうでないことを学んだ。信じてほしい」と言います。フィンチはマシンの「感染者ゼロ」で、グレースとは離れるしかなかった。自分がいない方が彼女の身を守れると信じて。だから、この言葉はグレースや過去のことではなくて、今のリースとの関係について言っているんだと思いました。

 マシンを開発したことでリースの運命を変え、そして仕事に彼を巻き込んだ。彼は今逮捕されて刑務所にいる。全て自分の責任だ。だが、そうであったとしても、自分がいた方がよかったのだと。それはリースがフィンチに「仕事があって幸せだと言ったのは本心だ。ありがとう、楽しかった」と告げた言葉が届いたんだと思う。少なくともリースを幸せにすることはできたのだから、リースにとって自分はいないよりもいた方がいい存在だと、この時わずかでも思えるようになったんじゃないだろうか。

 フィンチはずっとリースに対して罪悪感を抱え続けていて今でもそれは解消されていませんが、リースにとって自分は何かと置き換えられる存在ではないということがようやく少しずつ受け入れられるようになってきたのではないか、とこの会話を見て思いました。

 

 この会話の後、ケイレブは自殺を思いとどまります。鉄道駅にファスコも駆けつけてきて、ケイレブが自殺するはずだった電車がすごいスピードで駆け抜けていって、フィンチがぎこちなくケイレブの肩に手をやって…。このシーン、何度見ても涙が出ます。

 フィンチがクリスと話して「半年後には彼はアメリカで一番リッチな18歳になる」「いや…。ならない」と言ったところからこのシーンまで、ずっと胸が苦しいほどに締め付けられる。ほんとにこの回はすごいよ…。

 

 いつものリース無双&フィンチのハッキングも好きなんですが、こういうエピソード入るのがPOIの好きなとこです。リース回だとS1E21 Many Happy ReturnsとかS3E10 The Devil’s Share 、S4E20 Terra Incognita、フィンチ回だとこのエピソードだけじゃなくS4E22 YHWHとかS5E10 The Day The World Went Away、全部本当に傑作だと思います。スカッとするんじゃなく、胸が締め付けられる系ですね。

 

 今までなかったパターンですが、マシンは自殺も検知するんですね。自殺も検知するんだったら死ぬほどたくさん番号出そうですけど…。やっぱり我々の知らないところで大勢人助けしまくってるんだろうなーと。

 

 この回、ITの授業中に「最も悪名高いハッカー」の話になります。ネット黎明期にARPANETに侵入し、政府の一部に使用が限られていたインターネットを一般に開放したとされるハッカー。彼は捕まっておらず、「今もその辺をうろついているかも」と。これは事実ではないんですが、POI世界ではフィンチが世界にインターネット環境をもたらした設定になってるんですね。ちなみにSNS創始者も自分だって言ってましたね。最後、フィンチは自分がそのハッカーであることをケイレブにほのめかして去ります。πの最初の3000桁に自分の正体がある、と明かして。

 ケイレブ君、S4でまた出てきて「あなたは命の恩人だ、何も言わなくてもいい」って助けてくれるし、この回ほんと好きです。POIのラスト、フィンチはグレースのところに行ってもう過去とは全て縁を切った風の終わり方なのですが、私は今までの世界と繋がっててほしいし、ケイレブ君と交流してほしいなって思ってる。「過去からは逃げられない」というテーマもPOIの中ではよく繰り返されますね。

 

 ラストシーンはリースが独房に戻され、次回は尋問回!!カーターがリースを尋問するという、萌えが止まらないエピソードです。この2人のやり取りとフィンチの援護がたまらん。

 

POI:ケイレブ・フィップス(被害者?)

本編:2012年11月頃?

フラッシュバック:なし