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S3x02;I Am Unicorn 感想

glee感想については注意書きを必ずご覧ください。

yuifall.hatenablog.com

 無知なことに「ウエストサイドストーリー」も見たことないんですよね。。このミュージカル、よく「ゲイっぽい」って言われてるけど(gleeの中でだけじゃなくて)、その理由もよく分かんなくて。

 

 カートってこの手の葛藤繰り返しますね…。S1でも普通になりたいってストレートのふりしたし、S5でもガガじゃなくてケイティになって受け入れられたいってバンド始めたし、今回も「目立たなくするよ」って。

 今回のことはなー、本当になんというか、難しいですよね。委員長選挙では自分らしくいられなかったことでブリトニーと対立して負けてしまうけど、ミュージカルのことでは、結局抑えきれない個性で負けてしまうわけだから…。そもそもオーディションで歌った曲がバーブラだけどね…。ほんとにトニーやる気あるんかいっていう。そんで天然ブレインはトニーの曲歌っちゃうし笑。2人ともなんかずれてんだよなー笑。

 

 カートはブレインと出会った時からずっと、恋する気持ちと妬ましい気持ちで引き裂かれてきたんだろうな。同じゲイなのにブレインは男らしくて、歌もダンスも上手で華があって、ダルトンでは不動のリードボーカルで、NDに移ってすぐにトップシンガーになって、今度ミュージカルでは主役をオファーされて。

 それに比べて自分は大好きなミュージカルでは男の役はもらえないし、もらえても端役で、ヒロインの恋人役はさせてもらえない。どんなにうまく歌ってもヒロイン役はできない。リードボーカルも、男声は男の子と、女声は女の子と奪い合わなきゃないし、大会ではデュエットの曲なんかだと見た目的な問題でまず選んでもらえない。ブレインのパフォーマンスに心を奪われながらも、ずっと苦しかったんだろう。

 

 確かにカートが不良のリーダーに見えるかと言われると…。まあ、普通に考えたら見えませんね…(BL漫画だとよくあるけどね…。華奢だけど狂犬みたいな不良の受が出てくる話…)。だけど、ロミオとジュリエットで笑うことなくないか?まああの芝居は確かにちょっとあれなんですが…。S3x05でアーティが「ウエストサイドストーリーは性の目覚めの物語だけど君たち経験あるの?」って聞くけど、この芝居で「愛を交わした後」ってカートとレイチェルが横たわってるシーン、この2人全然「愛を交わした」気配ゼロだし、確かにちょっと笑っちゃうなって気がしないでもないんですが。

 とはいえロミオって15歳くらいでしょ?むしろあの繊細な感じの少年役には合うような気もしますがどうなんでしょう。みんなカートがちょっと女の子っぽいゲイだって分かってるからレイチェルとの絡みに笑ってしまうのかもしれないけど(百合っぽいよね…)、あのかわいい顔はロミオには合うと思います!というか日本では中性的な美形の方がヒロインの相手役として受け入れられやすいような気も…。アメリカだと違和感あんのかな。でもエマ先生は「私がマリアだったらあのか細い腕に抱かれたいわ」って言ってたし、華奢な感じの男の子も舞台映えすると思うけどなー。カートは背も高いし。ビースト先生の「タフガイがいい」みたいな意見がアメリカ人女性の総意なのか?でも「タイタニック」とか「ロミオとジュリエット」とか、当時のディカプリオってわりと華奢だなーって気がしないでもないのですが…。うーん、でもカートの場合はちょっと仕草が女の子っぽいとこもあるから難しいのかなぁ…。まあそもそもがロミオじゃなくてトニー役のオーディションですしね…。

 

 ブリトニーはカートのことをフラットに受け入れてるよね。この人はちょっと変わってて癖のある人だって。でもそれをそのまままっすぐ受け入れてる。自分を受け入れられてないのはむしろカートの方なんだよね。周りから見える自分と自分が見たい自分に齟齬がありすぎるというか。パパもカートを受け入れてる。「役がないならお前が作ればいい」って(最終回でブレインとカートは既存のミュージカルをLGBTQバージョンで上映したって言われてたけど、パパの言う通りにしたんだなーと)。

 ここでパパは「And you're not like Rock Hudson gay; you're really gay」って言ってて、これはscriptを見て調べないと分からなかったのですが、「お前はRock Hudsonタイプのゲイじゃない、本当のゲイだ」って言ってて。ロック・ハドソンってハリウッド俳優でタフガイ役で名を馳せてた人みたいです。ゲイでもタフガイができる奴もいるけど、お前はそうじゃない、(ユニークな存在としての)ユニコーンだ、って言うんだよね。パパとの会話を経てユニコーンである自分を受け入れられるようになってブリトニーとは和解するけど(まあライバルにもなるけど)、ブレインのことはまだ割り切れない。角がないユニコーンはただのダサい馬だ、ってパパは言う。自分はダサい馬にはなりたくないし多分なれない。ユニコーンでいるしかない。でもブレインは、同じゲイなのにサラブレッドだ。ストレートの男を演じられて、「普通の」世界で活躍できる。なぜ、って思うよね。S3x17でブレインに対して「きみはalpha gayだ」って言い方してるけど、カートは自分をomegaだと思ってるのかな。betaにはなりたくないしなれない。alphaのブレインに選ばれて嬉しいけど苦しい。

 ブレインはブレインで、カートが苦しむなら活躍なんてしなくてもいいと思ってるのが切ないよなー。この人ってずっとこういう感じで、みんなではしゃぐのが好きなリア充タイプで、しかも歌もダンスもうまいし人もよくて人気があるから自然と場の中心になっちゃうしそれが楽しいんだけど、カートが嫌がるんだったらやりたくないってなっちゃうんだよね。カートはブレインのそういうところもきっともどかしくて、自分が歯を食いしばっても手に入れられないものをあっさり捨てることができることに嫉妬してる。だからこそ、自分は苦しくても主役をやれってブレインに言うんだよね。なんか2人とも気持ちわかるから切ないです。どうしようもないもん。

 

 S5で2人の力関係のバランスが変わっていくのを描いているシーンがあるけど、それでもやっぱりカートがロック・ハドソンタイプのゲイになったかっていうとそうじゃないんじゃないかと思うんだよなー。本来はユニコーンのカートとサラブレッドのブレインは対立する存在じゃないし、どっちが強いとかじゃないはず。多分カートはS5のケイティorガガ回とBASH回を経てユニコーンである自分を本来の意味で受け入れ始めてて、だから(マッチョになって物理的に強くなったという以上に)精神的に成熟したのかなって思った。ブレインはこの頃自分を完全に見失ってて、おそらくですけど、S6の半ばでNYUへ行くって決めたあたりで、自分の本来の性格というか生き方を取り戻したんじゃないかなと勝手に考えてます。そこで2人の関係が本当の意味で対等になったのかなって。

 

 カートはブリトニーとライバルになっちゃって最終的には負けちゃうからかわいそうだなって思う反面、初めにブリトニーの意見を受け入れられなかったことが敗因というか、結局プライドを捨てきれてないところで全て失敗する人なのかなという気がします。学年委員長選挙といい、NYADA受験といい、ブレインとの婚約といい。

 S6の展開は最初けっこうショックだったのですが、前も書いたんですけど、カートはいったん打ちのめされてぼろぼろにならないと大切なことに気づけないキャラという位置づけなのかも、ってこの回を見直していて思いました。演出を全部捨ててNYADAに合格したし、結婚のことも、自分から「まだ愛してる」ってプライド捨ててぶつかるプロセスが必要だったのかなと。今回は自分がユニコーンだってことを受け入れられないのに学年代表になろうとしてたから負ける展開になったのかなと思います。後で「僕みたいなマイノリティの力になりたいんだ」って動機を語ってたし、本気で初めからそのつもりだったならブリトニーの戦略を受け入れるべきだったなと思いました。。

 

 この回よかったのはアーティがウエストサイドストーリーの監督になったとこ!これはシュー先生を評価したいし、「あなたならできるわ」って後押ししてあげたティナの友情にも萌えます!

 

 クインは迷走中…。ついにカツアゲまで…。まあ、こんな格好でも美人なのはさすがですけど(笑)。