「一首鑑賞」の注意書きです。
186.こころはあおい監獄なのに来てくれた かすかな足音を積もらせて
(小林朗人)
砂子屋書房「一首鑑賞」で井上法子が取り上げていました。
月並みな発想かもしれませんが、北原白秋の
君かへす朝の舗石さくさくと雪よ林檎の香のごとくふれ (北原白秋)
を連想しました。「あおい」「来てくれた」「足音」「積もる」から、それぞれ「雪(白)」「かへす」「さくさくと」「(雪よ)ふれ」に繋がったのだと思います。「監獄」も、「姦通罪」を連想させたのかも。
最初の「こころはあおい監獄」は、自分自身が自分の「こころの監獄」にいる、という意味に取りました。相手が「閉じ込められに」来たという読み方もできますが、ここではあおい監獄に閉じ込められた自分に会いに「来てくれた」のかなと。「かすかな足音を積もらせて」はほんとうに、「さくさくと雪よ林檎の香のごとくふれ」のイメージです。林檎の香のごとく降り積もった雪の上に、さくさくとかすかな足音を立てて近づいてくる。「足音を積もらせて」という表現が好きです。かすかな足音が積もることでそれでもわずかに増幅して大きくなり、来てくれるひとの輪郭を際立たせるような感じがします。言葉がきれいな歌だなと思いました。
中心はあかるい南向きの病室 メインリングは凍てつく氷 (yuifall)