2025年7月2-8日
・アンディ・ウィアー(小野田和子訳)『火星の人』上下
・アーナルデュル・インドリダソン(柳沢由実子訳)『黒い空』
・ピーター・スワンソン(務台夏子訳)『9人はなぜ殺される』
以下コメント・ネタバレあり
・アンディ・ウィアー(小野田和子訳)『火星の人』上下
アンディ・ウィアー面白いのでこれも買ってみた。『銀河英雄伝説』も『月は無慈悲な夜の女王』もそうだけど、SFってどうも政治や陰謀の話になりがちですが、アンディ・ウィアーのSFはわりと純粋にサイエンスフィクションなので読みやすいです。あんま嫌な人出てこないし、国同士の紛争もなく、困った時はみんなで支え合おう精神が貫かれていて、問題が起こるのは常に科学的な面です。そこを知恵を絞って解決する様子が見てて楽しいです。
明るく楽しいSFでおすすめです。
・アーナルデュル・インドリダソン(柳沢由実子訳)『黒い空』
シグルデリュル=オーリが主役の話です。前回はエリンボルクが主役だったけど、その回と同時進行という体のようです。日本では新刊なのですが舞台はサブプライムショック前のアイスランド好景気の頃(2007年頃?)らしく、金融絡みの詐欺の話と児童虐待絡みの殺人事件、それからパートナー交換パーティー絡みのトラブルが同時に進行します。北欧ミステリってどれも雰囲気が暗くて、ジェンダー平等や社会福祉先進国でありながら描かれる事件はどれも悲惨なDV、売春を含む人身売買、児童を含む性的虐待、ドラッグやアルコール、病気、人種差別などと深く関わっており、どう受け止めればいいか理解に苦しみます。現実にそういう事件が多いのか、単に全てを明るみにしているから相対的に多く見えるのか、社会派ミステリだけが翻訳・輸出されているのか、あるいは日本のミステリがいわゆる“本格モノ”に寄り過ぎなのか?
いすれにせよ人口35万人前後のアイスランドの姿が描かれた小説って他であまり見ないので、いつも興味深く読んでいます。作者的には全くそういう意図はないでしょうが、人が少なくてもどうにかなるのかもという期待も抱かされます。
・ピーター・スワンソン(務台夏子訳)『9人はなぜ殺される』
ピーター・スワンソンは作者買いしているので新刊が出たら買ってます。これは「そして誰もいなくなった」オマージュのミステリ作品で、9人の人間に名前のリストが送られてきて全員が死ぬ…?という話。これも新刊だけどけっこう昔の話なのか単に時代設定が昔なのか分かりませんが、登場人物の連絡手段は電話とメールだし“キャビンアテンダント”ではなく“スチュワーデス”という言葉が使われていたりします。9人がなぜ殺される?かは最後にはっきりしますが、納得できるかどうかは別の話で、犯人が狂った理屈に支配されていると思うべきか、ミッシング・リンクという性質上荒唐無稽な動機にせざるを得なかったのか、いまいち入り込めませんでした。動機よりもトリックを楽しむという本格ミステリでもないしなぁ。ミステリとしてというより、単に小説として楽しむべきか。