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読書日記 2024年1月17-23日

読書日記 2024年1月17-23日

伊坂幸太郎『残り全部バケーション』

冨樫義博『HUNTERxHUNTER』17-37巻

ヒラリー・ウォー『生まれながらの犠牲者』

・青崎有吾『地雷グリコ』

・川野芽生『無垢なる花たちのためのユートピア

中村うさぎ『ババア・ウォーズ 新たなる美貌』

中村うさぎ『ババア・ウォーズ2 閉経の逆襲』

中村うさぎ『ババア・ウォーズ3 税務署の復讐』

川瀬七緒『ヴィンテージガール 仕立屋探偵桐ヶ谷京介』

川瀬七緒『クローゼットファイル 仕立屋探偵桐ヶ谷京介』

川瀬七緒『法医昆虫学捜査官』

・里つばめ『SWALLOW’S BOX』

・アレックス・バーザ『狂気の科学者たち』

・渡辺優『私雨邸の殺人に関する各人の視点』

 

以下コメント・ネタバレあり

伊坂幸太郎『残り全部バケーション』

 伊坂幸太郎は好きなんですが読むのにエネルギーがいるタイプの作家なので時々買って少しずつ読んでます。相変わらずアウトローが続々登場する感じですがこれは割とライト目ではありました。読後感もよかったです。焼き肉屋だったら承知しねえぞ。

 

冨樫義博『HUNTERxHUNTER』17-37巻

 暗黒大陸に向かい出して、これもう収集つかないんじゃ?とか思いながらとりあえず既刊読了。幽遊白書で魔界編ぐだぐだで終わったのになぜまた似たような展開にするのか?でもなー、キメラアント編で終わりにしちゃうとクラピカとレオリオの話が全然回収されないまま終わるからなー。

 それにしても字が多い漫画ですね。設定とか考えるのが好きなんでしょうね。特殊設定ミステリ書いたら面白そうだな。空きページに作者の私生活が載ってるのが平成初期っぽく、結婚して子供産まれたりしてるんですが、そのお子さんももう成人かぁ、と勝手にしみじみした。

 

ヒラリー・ウォー『生まれながらの犠牲者』

 ずっと前に『失踪当時の服装は』読んだことがありとてもよかったのですが当時は作家買いという発想に至らず、最近になってこの本もあることに気付いたので購入。60年代が舞台の話ですが、社会的立場が異なる相手との関係性…ということで色々なことが頭をよぎったりして、とてもやるせない気になりました。

 

・青崎有吾『地雷グリコ』

 LIAR GAMEみたいな感じの話です。途中で話がどんどん壮大になっていくので続き物かな?と思いましたが綺麗に完結しており読みやすいし面白いです。しかしながらどうしても突っ込みたい点が…。ネタバレ嫌な方は回避してください。

 

 

 絵空が推薦で行きたがってた高校、「推薦枠は大学のAO入試に近い形式で、書類選考と自己PR面接の一発勝負だと聞く。ただし基準がかなり特異で、絵画で賞をとりましたとかアプリ開発で何百万稼ぎました程度の個性では弾かれてしまうらしい」と書いてましたが、そんな推薦枠に「成績上位者に偽の問題を流して全体の平均点を下げた(学年全体のテスト結果を操った)」で入れるのおかしくないか??めちゃしょぼいやん。そもそもそれを自分がやったっていう確実な証拠も出せないし、ただイキってる人にしか見えんわ。

 あとそんなことが中学で実現可能とは思えん。中高一貫私立はどうか知りませんが、普通に高校受験するような人たちの行く中学校の成績上位者って、学外(塾とか)で勉強して進度が高校レベルまで進んでるか、もしくは全然勉強しなくても中学レベルのテストには余裕で対応できるかのほぼ2択で、いずれにせよ基本的に中学レベルの問題ならどんなものが出ても解けるはずなので、事前にどんな嘘情報流されてもそれで当日テストが解けず全体の平均が下がるなんてことはあり得ないでしょ。もし自分が情報流される立場だったらそんなものまず信じないし。

 このエピソード、この本のロジック的な部分とは一切関係ないけどストーリーの根幹にあたる出来事なので、その辺のガバさが気になりすぎてちょっと、って感じでした。あんなに面白いゲーム作れるのになんでその辺いい加減なのか?話に入り込めんだろ。

 

・川野芽生『無垢なる花たちのためのユートピア

 川野芽生のことは当然歌人として知っていたのですが、小説も出していると知って買ってみました(歌集は持ってないのに…。すみません)。当然言葉は美しく、もともとそれ目当てに買った程度だったのですが、小説の内容がすごかったです。最初の「無垢なる花たちのためのユートピア」もですけど、最後の「卒業の終わり」がね、とんでもなかった。読んで泣いたよ。思春期から20代前半くらいの間に感じていた葛藤みたいなものを全て描かれたような気がした。友達との関係性の変化とか、執着や嫉妬、憧れ、近づきたいのにそう言い出せない気持ち。そして外の世界で女がどう扱われるか、ということ。苦しかったけど読んでよかったです。

 作者がアロマンティック・アセクシャルということで、これは「ヘテロセクシャルを強いられることへの抵抗」と読んでいる感想も見ましたが、私はこれは普遍的な女の物語だと思ったし、ディストピアSFではなく現実だと感じました。まさに現実だと。

 ちなみに英語タイトルは「The Nowhere Garden for The Innocence」で、このセンスのよさほんと痺れます。

 

中村うさぎ『ババア・ウォーズ 新たなる美貌』

中村うさぎ『ババア・ウォーズ2 閉経の逆襲』

中村うさぎ『ババア・ウォーズ3 税務署の復讐』

 いつぶりか忘れましたが再読。川野芽生の次がコレかよって感じですが、25歳を過ぎて生き残り「わきまえない」生き方をしてる女の姿が見られてとてもすがすがしかったです。15~10年くらい前のエッセイなんですけど、社会問題が今とあんま変わってない感じがして微妙な気持ちになりました。また15年後に読んでみたらどんな風に見えるのかちょっと興味あります。

 しかし、最後の対談でオタク界隈からジェンダーレスが進むんじゃ、みたいな発言ありましたが、これは残念ながら期待しすぎでしたね。むしろ表自戦士によるポリコレバックラッシュからの分断が加速している感があります。

 

川瀬七緒『ヴィンテージガール 仕立屋探偵桐ヶ谷京介』

川瀬七緒『クローゼットファイル 仕立屋探偵桐ヶ谷京介』

川瀬七緒『法医昆虫学捜査官』

 面白そうだなと思って3冊まとめ買いしてみた。仕立屋探偵の方は、人の服装や骨格から未解決事件の真相に迫る!みたいな話で今までにない着想だったのでとても面白かったのですが、キャラクターの口調が気になりすぎてうーん…。主人公は涙もろい30代男性で、助手?みたいな女性は口の悪い美女、それに中年の小太りの警官が主に登場するのですが、

 

警官「急に厄介事を持ち込んで申し訳ないんだけど、ちょっと見てもらえない? 初めに言っちゃうけど、無償でね」

(中略)

美女「あたりまえでしょ。ギブアンドテイクは物事の基本なんだよ。わたしは釈迦如来からの頼みでも即見返りを求めるからね」

主人公「仮にも実家がお寺なのに、その考えは問題ないの?」

 

 全員喋り方一緒やん。別にキャラ立ちさせろとは言いませんが、違和感ありすぎんか。あと最初の設定説明を地の文じゃなくてキャラの台詞でやるのもちょっと。説明くさい台詞を濃いキャラでやるからキャラ立ち系小説なのかと思いきや口調が全員一緒なので余計違和感あるんですよ。ミステリーそのものはわりと硬質で面白いんですけどね。

 法医昆虫学捜査官の方はキャラの口調とか気になることもなく読みやすかったです。てことは仕立屋探偵の方の喋り方はわざとやってんの?解せないなぁ。昆虫の方続編読んでみようかなと思いました。

 

・里つばめ『SWALLOW’S BOX』

 ファンブック的な何か?本編の記憶が断片的なので時々どういうシチュエーションなのか分からなくなりながら読む始末でした。この人の描くキャラとか設定すごく好きなんですが、走ったりとかの動作の絵に違和感あるのが気になる。

 ところでBLにおける好きが高じて無理矢理系の話とても嫌いなんですが未だに滅びないんですかね。なんかノルマとかあるんか?このシチュエーション入れてください的な。色々書きましたが電書で買える漫画は全部持ってるし、ファンブック買うくらいにはファンです。

 

・アレックス・バーザ『狂気の科学者たち』

 狂気って言っても人殺し系人体実験ではなくてどちらかというとトンデモ科学系ですが、割と残酷な動物実験とか今の倫理観では納得できない人体実験も含まれるので万人にはお勧めしない感じです。個人的にはトレヴァー・ノートンの『世にも奇妙な人体実験の歴史』とかリディア・ケイン&ネイト・ピーダーセンの『世にも危険な医療の世界史』の方が面白かったかなぁ。

 

・渡辺優『私雨邸の殺人に関する各人の視点』

 視点によって考え方・感じ方が違う話が好きなので買ってみましたが、そういう系統の話(宮部みゆきの『理由』みたいな)というよりはクローズドサークルもののメタミステリでした。そうなるとどうしても米澤穂信インシテミル』と比べちゃってちょっとなー。『インシテミル』よりは淫してる度は低めなので、ライトに読めるかもしれません。でも何度も読みたい系ではなかった。