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「一首鑑賞」-59

「一首鑑賞」の注意書きです。

yuifall.hatenablog.com

59.キャンパスの全禁煙など説くありて正しきことはただにぞ寒き

 (島田修三

 

 砂子屋書房「一首鑑賞」で大松達知が紹介していた歌です。

sunagoya.com

 個人的な意見を言わせていただくと、非喫煙者ですし、喫煙する人と一緒には過ごしたくないです。親しく付き合ってる友達に喫煙者は全くいないし…。それでも、「正しいって寒いなあ」って気持ちは何となく分かる。これはおそらく人によって、ある物事に対して許せる・許せないの境界が違うから、その境界~許せる寄りにいればいるほどそう感じるのだろう。

 

 子供の頃、どこででも煙草を吸えるのが嫌でした。電車とかで隣のおじさんがずっと煙草を吸っていて、臭いし気持ちが悪かった。路上喫煙もポイ捨ても多かったし、もし私が路上に立って見知らぬ人に香水を吹きかけたりしたら完全にヤバい奴なのに、臭い+煙が出る+健康に害がある+火を使う+ゴミが出る煙草がどこででも吸うことを許されているのは正気じゃないと思ってたし今も思ってます。

 

 かつてそれは、まあまあ、なあなあ、という感じで許され包まれてきたはずだ。そういう昭和時代の牧歌的なあれこれが、時代に余裕がなくなるにつれて、断罪されつつある。

 

とあるのですが、女子供だった私に発言権などあるはずもなく、嫌だ、という気持ちがねじ伏せられてきたという意識しかありません。「許した」記憶は一度もない。「断罪される」というのは不当に利益を得てきた側の勝手な言い分に過ぎないと思う。

 

 でも、ハードボイルド小説とか読んでると、やたら葉巻の産地に拘ってたり、煙草の銘柄も面白いのがあったりして読んでいて興味深いなとは思います。お酒と一緒で、嗜むべき場所で嗜めばその方がいいんじゃないかな。喫煙可の喫茶店とか飲み屋とかで。昔ヴァニラ味の煙草とかチョコレート味の煙草とかに憧れたなー。厨二病でした (笑)。

 

 そういえばコペンハーゲンを舞台にした警察モノの『特捜部Q』(J・エーズラ・オールスン)シリーズで、捜査会議室かどこかで煙草を吸っている描写があり、「彼は政治的に正しくない空気に包まれていた」とかって書いてあってめっちゃ笑った。Anti-political correctness ですね(笑)。

 なんか、警察署とか新聞社とかそういう場所では喫煙やむなしなイメージもありますよね…。もしかしたら作者にとっては「大学キャンパス」はそういう場所だったんだろう、って想像はできます。確かに私が大学生だった頃も工学部とか理学部とか男子が多い学部では喫煙者が多かったし、おそらく島田修三の常識からすると大学ってもっと男臭いバンカラな場所だったのかもしれません。今では先進国の大学進学者は女性の方が多くなっているらしく、大学にフェミニンなイメージがつくことで男性の進学意欲が低下することが懸念されているとかなんとか…。キャンパス全禁煙も、島田修三からしてみると「大学は女子供のもんじゃねえよ!」って感じなのかなぁ。

 

 こういうこと突き詰めていくとやっぱり男女平等とかそういうポリコレ的問題になってしまってここで書いてもつまらないので、この辺に留めておきます…。ですが、「正しいってつまんねえ」って思うその陰には、抑圧されてきた人たちの存在があることは自覚しなきゃいけないんじゃないかとは思います。「古き良き」なんていう言葉本当に嫌いだし。よかったのはお前にとってだけだろ、と言いたい。(あとは「女の敵は女」って言葉も大嫌い。そういう、物事の一面しか見ない言い方ほんと嫌い)

 

 ところで私が「正しいと寒いなあ」って思ってたことは何かというと、大学生の飲酒ですかね。18歳からでもいいんじゃ?って思ってました。ですが、飲酒強要とか一気飲みとか毎年春には問題になってましたし、大学生になってからさらにワンクッション置いて20歳以上になってから、の方がやっぱり事故が少なくていいのかもなぁって気もします。アメリカなんて21歳以上だし…。まあ今コロナで大学生は飲酒喫煙どころじゃないのかもしれないですが。

 

 

間違ったことはホットで楽しいね、奪い犯してねじ伏せるのは (yuifall)