「一首鑑賞」の注意書きです。
33.つま先に灯を点すような恋だった 靴下を履くことを覚えた
(嶋田さくらこ)
砂子屋書房「一首鑑賞」で光森裕樹が紹介していた歌です。
意味が分からないながらも心惹かれてクリックしてみました。解説には
つま先がじんわりと温かくなる感覚はある。しかし、身を燃やし尽くすようなものではない――そんな、さりげのない、密やかな恋だったのだろう。光るつま先を恥じらうかのように、また、大切に慈しむかのように「靴下を履く」わけである。(中略)光るつま先を靴下で覆っても、まだほんのりと光は漏れてくる。
とあります。そうか、これは「しのぶれど色に出でにけりわが恋」なんですね。それを「つま先に灯を点す」と表現したのが面白いなと思います。つま先がじんわりあったかくなるような恋かぁ。すごくどきどきしました。
他にも何首か歌が引用されています。
同じように、過去を振り返ったり別れを予感させる場面にさりげなくも印象深い譬えが組み合わされた歌を歌集から引いておきたい。
行くことのない島の名はうつくしい 忘れられない人の名前も 「トロイメライ」
たんぽぽが綿毛を飛ばすつもりなどなかったようなさよならでした 「Blumenlied 花の歌」
流星のお墓みたいな砂浜で愛されたまま去りたい ごめん 「くしゃみ色」
どの歌も比喩表現が素敵で心に残りました。
愛でなく執着ですか、信号で別れるように立ち去れぬなら (yuifall)