山田航 「現代歌人ファイル」 感想の注意書きです。
高木孝
奔るひた走るコンピュータッタッタタタ多多みづの彼方の水へ
ざっとまあこんな感じで塗り分ける色えんぴつの行進タッタッ
1968年生まれということで、ニューウェーブ世代かやや下くらいでしょうか。解説には
高木と同年生まれの歌人には千葉聡や枡野浩一、1歳下に吉川宏志、2歳下に松村正直がいる彼らはニューウェーブ短歌の影響を受けながらも、その新しい短歌運動を相対化し、ときに批判的に見つめ直すということを初めて行った世代といえると思う。(中略)口語を取り入れ表記の幅を広げた自由度の高い短歌。闊達で、面白い。タと多を重ねるビジュアル的なレトリックも含め、読んでいて楽しい作風だ。
とあります。こうやって年代別に歌人を見ると面白いですね。松村正直ってポストニューウェーブ世代と思っていましたが、実は年代的にはこの辺なんですね。枡野浩一や吉川宏志は、穂村弘の影響全盛期の時代に自分流を貫いた歌人というイメージがあります。ここに引用されている高木孝の歌を詠むと、名前が挙がっている歌人よりはややニューウェーブ寄りなのかなぁって印象があります。誤読かもしれませんが、荻原裕幸の影響を感じなくもないな。
でも、
わがバニラなしチョコレートストロベリー他約百種色即是空
次期課長候補なりしが希望してあの世へ人事異動ありけり
みたいな歌はもっとポストニューウェーブな感じがしますね。
それにしても、引用されているだけでも作風が色々で面白いです。
とても、ね、とても静かな、本当は冬木の中にひとりぼつちで
はなんとなく渡辺松男を彷彿とさせるし、最終的には
ありつたけの語彙を絞りて坂道をのぼる自転車「パパがんばれえ」
こんな感じになっていて、解説では
作風に幅があり、多面的な読み方ができる歌人であると思う。
とあります。
ところで色んな詠い方をしていても子供のことになるとわりとオーソドックスになってしまう傾向って女性歌人よりも男性歌人にみられるような気もするのですが、私がアンソロジーで秀歌しか読んでいない故の偏った観測かもしれず断定はしかねますね…。
あとは手袋片方なくす系の歌好きなのですが(ワンテーマで色んなバリエーションがあって面白い)
てぶくろは嫌ひだいつも片方をなくす うつすら雪積もる岐路
これもよいですね。
むかしむかしそのまたむかしのおじいさんとおばあさんって40くらい? (yuifall)