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現代歌人ファイル その42-森本平 感想

山田航 「現代歌人ファイル」 感想の注意書きです。

yuifall.hatenablog.com

森本平 

bokutachi.hatenadiary.jp

手を伸ばせども指の透き間をすり抜けるあの夏色の空を忘れず

 

 最初にこういう美しい歌が紹介されるので、だんだんとページを下にスクロールしていくにつれて短歌の内容が変質していく様はホラー小説よりも怖いです(笑)。ぜひこのページにアクセスして恐怖を味わってください(笑)。最終的には

 

死んでも火葬じゃ蛆の餌にもなりゃしない流した精子の量が人生

 

皮カムリ教師ハ実はれいぷ犯(削除)ノ血筋ト電波ニ教ワル

 

こうなります…。この作品についての解説がすでにちょっと怖くて(笑)、

 

 「1 一九八一年」では「主人公」(17歳だが、中二病丸出し)、「主人公の担任」(レイプ常習犯という裏の顔を持つ)、「主人公の友人」(全編カタカナ書きで読みにくい)それぞれの立場から短歌が作られている。「2 一九九一年」は非常勤講師となった10年後の主人公と、「主人公の恋人」(子供を虐待している)、「主人公の恋人の子供」の三部立てからなる。「主人公の恋人の子供」の項はただの悲鳴でありもはや短歌にはなっていない。そして「3」が現在なのだが、収録順は3→1→2→3となっており時系列がばらばらである。こういった「時間」と「主体」をバラバラに切り刻む連作意識には、ポストモダン文学の影響が色濃いのだろう。

 

ですって。

 

 私の中でストーリー連作短歌というと千葉聡の「リョウは虹の所有者みたいに笑う」みたいなやつだったので、レイプ犯だの虐待母だのただの悲鳴だのはハードル高すぎますわ…。しかし解説の「17歳だが、中二病丸出し」には笑った。主人公は17歳の高校生から非常勤講師となっていて、学校を舞台に設定することにこだわるのはどういう意味があるんでしょうか。この人の作風の背景には家族との葛藤がある、と解説では語られていましたが、家族と学校、という10代の世界への憎しみのようなものが感じさせられます。

 

 

きみのbotとれんあいをしてるけどきみならぼくを好きにならない (yuifall)