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現代歌人ファイル その38-長岡裕一郎 感想

山田航 「現代歌人ファイル」 感想の注意書きです。

yuifall.hatenablog.com

長岡裕一郎 

bokutachi.hatenadiary.jp

青空にマグリットの月冴え冴えと「諧謔」は歩く恋愛海

 

 東京藝術大学美術学部油絵学科卒業の人のようですが、作品は19歳、浪人時代のものだそうですが、やはり絵画的イメージの歌が多く紹介されています。この歌でググって知ったのですが、マグリットの絵、すごい綺麗ですね。あーなんか得した気分だな(笑)。そしてWikipedia先生が教えてくれたマグリットの人生にも萌えた…。

 

マグリットの生涯は芸術家にありがちな波乱や奇行とは無縁の平凡なものであった。ブリュッセルでは客間、寝室、食堂、台所からなる、日本式に言えば3LDKのつましいアパートに暮らし、幼なじみの妻と生涯連れ添い、ポメラニアン犬を飼い、待ち合わせの時間には遅れずに現われ、夜10時には就寝するという、どこまでも典型的な小市民であった。

 

だってさ…。しかも絵の大半の女性モデルは奥さんなんだって…。なんつー萌えだよ。

 

 あとこの人は『不思議の国のアリス』をモチーフにした歌も作っているそうで、

 

アリスと森かけめぐる夢よりさめて恋を占なえ、ハートの邪悪(ジャック)

 

ひそやかに「アリス演技」を続けたり荒唐無稽をその聖書とし

 

こんな感じです。アリスっていうとどうしてもロリータ的な、なんというかちょっと危うい感じのポップ、解説によれば「コケティッシュ」を感じてしまいますが、だけどここにもあるように「アリス演技」なんですよね。コケティッシュでエキセントリックな少女にのみ許されるあざとさ、それが切ないのは、それがやっぱり「演技」だからかな、と。他者からのまなざしがあって初めて成り立つ人格だから。というか多分「ロリータ」といい「アリス」といい、一度も少女であったことのない人間によって描写された少女だからキャラっぽいんだろうなって気がします。

 

ビーカーの劇薬優しく変色とげて香りをたてる化学室の春

 

 解説には

 

ビビッドな色彩が天然色映画のようにぱたぱたと切り替わっていくような作風は、塚本邦雄とも微妙に異なる個性でありかなりの魅力がある。また、「悪」や「堕落」への傾倒をみせるデカダンな雰囲気も特徴である。単純に浪人生の不安がそういう退廃ムードを好ませたのかもしれないが、まさに19歳だったから書けたような一連であった。

 

とあります。ちょっと退廃的な、でも色彩豊かな、なんだろう、『ヘルタースケルター(映画)』みたいな感じかなぁ。出てくるキャラクターはもっと若いのかもしれないけど。てか、19歳か…。

 

 

モンパルナスのキキを取り出す眼差しが白き敷布に頽れさせる (yuifall)