山田航 「現代歌人ファイル」 感想の注意書きです。
干場しおり
サンダルはぜったいに白 君のあと追いつつ夏の光になれり
この歌の爽やかさが不思議だ…。奥村晃作の「ボールペンはミツビシがよく」は爆笑したのに…。同じ無根拠系でもどうしてこんなに印象が違うんだろうか。解説には
バブル期の空気を残すキラキラ感覚が散りばめられた、ポップな歌風
とあり、この歌についても
「サンダルはぜったいに白」というようなあまり深い意味のない感覚的なこだわりもそうであろう。ささやかなことであっても、誰かを自分のものにしたい、自分だけのスタイルを持ちたいという欲求を、時代が許してくれていたのである。きらめくようなモラトリアムの時間が、個人にとどまらず社会全体を覆っていたのかもしれない。
と書かれています。まあ確かに、サンダルは絶対に白、だから人を殴ってでも白いサンダル奪い取るぜみたいなノリだと奥村晃作のロッカーの歌みたいになりますが(笑)、夏の光になっちゃうんだもんなー。きらめくようなモラトリアムかぁ…。
果てしなくわたしが続く多面鏡ひとりくらいはしあわせになれ
第2歌集から引用された歌です。今度は働く女になっていて、「わたししかできないことがない」「さからえぬ流れ」「今日もまた辞められぬ」っていうサラリーマン(OL?)の哀愁漂う感じになってます。解説では、単に年齢とともに成長したからではなくて、時代の移ろいだろうと書かれていますね。バブル崩壊後の働き方ってことなのかしら。
海風をつれて歩いた午後にならきっときれいに言えるさよなら
こういう歌について、山田航は「90年代以降の「喪失」」と書いています。バブル世代以降はこういう「喪失感」を持ちえないのかどうかはよく分からないのですが、この人の歌の空気感って銀色夏生に似てるなーってちょっと思った。調べたら1960年生まれみたいで、干場しおりと4つ違いですね。このくらいの年代の空気感なのかもしれないなー。いつもいつも次に来る季節が好きなの。
仮定法過去完了でつぶやけば積みあがってく(でもしなかった) (yuifall)
次に来る季節ばかりを愛してて残暑にダウンコートがいるわ (yuifall)