山田航 「現代歌人ファイル」 感想の注意書きです。
高柳蕗子
早起きの老人ばかりの暗殺団不吉なことは内緒にされる
この人、『短歌タイムカプセル』の時も出てきていて、その時は全然世界観が理解できなかったのですが、今回解説があってほっとしました(笑)。そして山田航は
いまいち意味がよく分からないが、とにかく笑える。
と書いていて、いまいち意味が分からなくてもいいのかーっていう安心感と、この人とは笑いのツボが違うのかもって思った(笑)。私は浜田康敬の方が笑えるもん。というか、同じ歌読んでても感じることって人によって違うんだなーってのがほんと面白いなと思いました。
今回わりと自分にも理解できる系統の歌ばっかりピックアップしてるのですが、元のページ見ていただくとエログロナンセンスみたいな歌も多くて、これは、ハマる人はほんっとハマると思う。
解説によると父親の高柳重信は俳人で、しかもすごい魅力的な人物だったらしく、娘(この人)にも妹にも熱愛されていたとか。へえー。桜庭一樹の『私の男』とか、米澤穂信の短編集『満願』に入っていた「柘榴」という小説を思い出してしまった…。魅力的な男ってちょっと怖いです。
「パパ……!」と息呑めばパパそっくりの痴漢も驚いて降りてった
この歌なんか読むとどきっとしちゃいますよね。パパ似の痴漢かよ。ALI PROJECTの『聖少女領域』思い出したわ。
囁いて、パパより優しいテノールで 奪う覚悟があるのならば
ってとこ。
いつまでも少女でいるその代償は絞殺される毎晩の夢
この歌も、ずっとパパの少女でいたいってことなのかなぁ。飯田有子といいこの人といい、「少女でいることへの執着」と「グロテスク」ってわりと強い結びつきがあるのかもしれません。ところで「娘を嫁にはやらん!」とか言ってるやつって、娘が50歳になっても同じこと言うのかなーとかわりとよく考えてます(笑)。
ちなみにパパの高柳重信はどんな句を詠んでいるのだろうか?とググってみたところ、多行書きで有名らしく、
くるしくて
みな愛す
この
河口の海色
などがヒットしました。Wikipediaによると1950年に『蕗子』という句集を出しているようですが、娘の高柳蕗子は1953年生まれらしく、句集に娘の名をとったわけではなくて娘に句集の名をつけているんですね。『蕗子』にはどういう意味があるのだろうか。さらにググると、
●●○●
●○●●○
★?
○●●
ー○○●
が句集『伯爵領』に収録されているそうです…。1952年の作品だとか。俳句の方が短歌よりもはるかに先進的なのかもなーと思いました。そもそも俳句のあの短さと季語縛り、そうとうアヴァンギャルドな文学体系ですよね(笑)。
膠芽腫でパパは死ぬでしょその時はきっと頂戴両手の小指 (yuifall)
知ってるわ奪う狂気もないくせに女にされる前に死んでよ (yuifall)