山田航 「現代歌人ファイル」 感想の注意書きです。
紀野恵
晩冬の東海道は薄明りして海に添ひをらむ かへらな
デビュー当時高校生だそうです。恐ろしいな…。この歌を高校生が詠むなんて…。ちょっと自分の脳みそからは考えられないですね。この人は水原紫苑と共に「新古典派」と言われているそうです。
日本古来の古楽的リズムというよりも、西洋的なスタイリッシュな韻律感覚に覆われている。
と解説にはあり、
ゆめにあふひとのまなじりわたくしがゆめよりほかの何であらうか
不逢恋(あはぬこひ)逢恋(あふこひ)逢不逢恋(あふてあはぬこひ)ゆめゆめわれをゆめな忘れそ
なんて、リズムの心地よい歌ですよね。
いさ五月風はあへぎのもえぎいろ萌えたつやうな詩集を空へ
これも綺麗な歌だなー。どれも、解釈するよりもリズムに浸って楽しんだ方がいいのかなと思って言葉少なですが、解説を引用します(笑)。
「ゆめ」という語が目立つが、紀野が志向しているのが音楽性であり、またこの世とは別の場所にある「ゆめ」の世界の美であるということが端的に表わされているのだろう。紀野は「王国の歌人」であり、〈私〉の中に構築された異世界の美しさを表現しようとしているのだ。その世界は美しい音楽が風のように常に流れており、美しい自然に覆われているのである。
ゆめにみたひとよあなたはひさかたのひかりをひろげひらめく輪舞曲(ロンド) (yuifall)