書肆侃侃房 出版 東直子・佐藤弓生・千葉聡編著 「短歌タイムカプセル」 感想の注意書きです。
佐伯裕子
パラソルをかざしてゆくよ有史より死者は生者の数を凌ぐに
そうですよねー。ありとあらゆるところで人は死んでますよね。「廃病院」とか「墓」とかのホラーがなんかピンと来ないのは、自分の毎日寝てる足元の地面にも死体は埋まりまくってるしまさにそこで人はめちゃくちゃ死んできてるわ、ずっと、って思うからかも。
「パラソル」「死」というと、どうしても「テロリストのパラソル」思い出します。藤原伊織の。
殺むるときもかくなすらむかテロリスト蒼きパラソルくるくる回すよ
ですよ。この小説好きだったな。
この人は祖父が東京裁判で処刑されているそうで、「くびられし祖父」「祖父(おもちち)の処刑」といったテーマで詠まれた歌が多く、これについてはちょっと私にはテーマが重たすぎて感想を言いかねます。。
くびらるる祖父がやさしく抱きくれしわが遥かなる巣鴨プリズン
という歌もあります。巣鴨拘置所は今サンシャインシティですね。巣鴨プリズン時代を知る人が、「あの頃はあの辺すごく暗かった」と言っていて、今のサンシャインという名称とのあまりの落差にくらくらしました。池袋東口…。乙女の聖地やん…。第二次世界大戦の戦犯を処刑した場所がああなってしまうというのは、ある意味すごくJapanっぽいですね…。
でもなー、昔のNYや香港を舞台にした小説とか読んでるとどこの国でもそういう歴史の上に華やかな現在があるのかもって気もしてます。
祖父を詠った歌以外では、
陽のかぎり誰か揺りにしブランコをぬばたまの夜はわれが揺するも
という歌、すごく好きです。多分昼は子供のものだから、夜にゆするんだね。
風に揺るる鞦韆ひとつ 傷つきしほどは傷つけ来しと思えり (山埜井喜美枝)
を思い出しました。
優れたる生などありや有史より死者に連なるmortalなれば (yuifall)