書肆侃侃房 出版 東直子・佐藤弓生・千葉聡編著 「短歌タイムカプセル」 感想の注意書きです。
葛原妙子
口中に一粒の葡萄を潰したりすなはちわが目ふと暗きかも
何だか葡萄じゃなくて目を食べてるんじゃないかという気持ちにさせる歌ですね。葡萄の感触とか甘さが蘇ってくるようで、でも何となく暗い罪悪感をおぼえるような気もします。眼球のあのにゅるっとした感じが葡萄とオーバーラップするというか。
疾風はうたごゑを攫ふきれぎれに さんた、ま、りぁ、りぁ、りぁ
これも想像できるけどやっぱりちょっと不気味な感じがします。
ところで、「アヴェ・マリア」は知っていたけど「サンタマリア」って歌詞の聖歌ってあったかなーと思って調べたら、アヴェ・マリアの歌詞の一部がイタリア語、スペイン語だとSanta Mariaなんですね。ラテン語だとSancta Mariaのようですが、これも「サンタマリア」って発音するのかな。聖歌なのにどうしてこんなに不気味な感じがするんだろう…。風に切れ切れになって、祈りがどこにも届いていないなって感じるからかな。
晩夏光おとろへし夕 酢は立てり一本の壜の中にて
酢が壜の中に立っている、という発想にまず驚きます。なんか、壜の中で中身が浮いてそう。この酢は薄黄色のやつですね、バルサミコとかじゃなくて。夏の夕方の光の中できらきらと輝いていて。
後から知ったのですが、幻視の女王と言われている人だそうです。超大御所でした。。こういう人の歌を読む時、まずは解説が欲しいなと思ってしまう私です…。読み方を教えて!もったいない!
眼球のぬめる中身を吸ひ取つて我がまなかゐの余韻を告げよ (yuifall)
定まつた道辿るごとヴルタヴァに別るる ”Dunkel ist das Leben, ist der Tod.”(生も死もまた暗い) (yuifall)