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短歌タイムカプセル-大塚寅彦 感想

書肆侃侃房 出版 東直子佐藤弓生・千葉聡編著 「短歌タイムカプセル」 感想の注意書きです。

yuifall.hatenablog.com

大塚寅彦

 

入れ子人形(マトリョーシカ)だんだん小さくなる自我のさびしさ並ぶ店内にをり

 

 glee S2の BORN THIS WAY の感想の回 でも書いたのですが、自分自身の自我について考えた時、イメージされるのがあの冷蔵庫とかに入れるゲル状の脱臭剤の使い終わって水分を失って干からびて縮こまって固まったやつで、なんかもっとうまい例えがあるんじゃないか、干し梅?固い方のドライいちぢく?とか色々考えていたのですが、スライムでした。あのでろっとしたやつ。若い頃はでろっとして肥大してて、だんだん固まって干からびて変な匂いになって、気付くとカチコチになっててまだあったの?ってポイされるやつ。あれだわ。今干からびつつあるあたりです。

 マトリョーシカも徐々に小さくなるあたり、それっぽいのかも。でも、あれは一番小さいやつが一番かわいいよね!自我が小さくなるとさびしいでしょうか。これは、老いっていうことなのかもしれないなと感じました。やっぱり、10代の頃の万能感ってもうないですもんね。うーん、だけど、私自身はまだ自我が小さくなってさびしい段階には達していないなー。

 というか青春期を過ぎていったん少し小さくなった自我はまた壮年くらいで肥大してくるイメージなので、「さびしい」のはさらに後、「恍惚の人」状態になってからかなぁと思いました。だから、この歌で「さびしい」って詠われてるのはもしかしたら親とか、そういう存在なのかもしれないなって気がします。生まれた時は自分は母親の中にいるマトリョーシカ状態だったのに、今は母親の自我はしぼんでしまってもう自分の記憶の中にしかない、みたいなさ。

 

生没年不詳の人のごとく坐しパン食みてをり海をながめて

 

 こういう、自分が何者でもない感じの歌に心惹かれます。でも実際は生没年不詳の人にはなれないから「ごとし」なんですよね。このまま誰でもない人になっちゃいたいなって海を見ながらパンを食べる瞬間が今欲しいなー。海行きたいなー。

 これは何パンなんだろう。パン屋のパンじゃない感じするなぁ。食パンとかランチパックとか、大量生産品のような気がするな。

 

 全然関係ないですが、遊覧船乗り場で買った「カモメパン」(カモメにやるエサのパン)、今まで食べた食べ物の中でもトップクラスのまずさでした(笑)。いやそもそも人間の食べ物じゃないんですけど…。磯臭いパンって衝撃的だったわ…。あのパン食べてたら「生没年不詳の人」のごとくはなれないね、絶対(笑)。

 

 

固まって乾きつつあるジェル状の自我だ 今すぐ撃ち抜いてくれ (yuifall)

 

 

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