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短歌タイムカプセル-大口玲子 感想

書肆侃侃房 出版 東直子佐藤弓生・千葉聡編著 「短歌タイムカプセル」 感想の注意書きです。

yuifall.hatenablog.com

大口玲子

 

わが一生(ひとよ)いつどこで鬼と逢へるらむその日のために化粧を濃くす

 

 最初は化粧は魔除けなのかな、と思ったのですが、「逢へるらむ」という言葉遣いのニュアンスからはむしろ会いたいような感じもして、会える日のためにおしゃれしておこう、ということなのかな。いつどこで救急車に乗せられるか分からないからきれいなパンツ履いとこうみたいな(笑)。この「鬼」っていうのは死みたいなニュアンスなのかな。それとも、困難みたいな感じかしら。

 

夏きざすやうに勇気はきざすのか飲酒ののちの蕎麦のつめたさ

 

 この人は日本語の先生なのですね。「きざす」を調べると、大辞林第3版では

① 草木の芽がもえ出ようとする。芽ぐむ。 「新芽が-・す」

② 事が起ころうとする気配がある。 「春が-・す」 「大乱逆-・してけるにや/愚管 2」

③ 心の中に考えなどが生ずる。 「疑心が-・す」

④ 事を起こし始める。 「ムホンヲ-・ス/ヘボン 三版」

だそうです。

 夏きざすは②で、勇気がきざすは③かなあ。自然に生じるのか、奮い立たせるのか、っていうことなのでしょうか。つめたい蕎麦を食べていて「夏きざすように」って言ってるんだから五月頃の暑い日で、お昼に一人でお蕎麦屋さんで日本酒飲んでいるイメージです。何か勇気が必要なできごとがあるんだろうなと。女の人が一人で昼からお蕎麦屋さんで日本酒飲んで奮い立たせるのって(勝手なイメージ)、何に対する勇気なんだろうな。ぱっと思い浮かんだのは離婚ですけど…。でも個人的には恋愛がらみじゃない方がいいなぁ、なんとなく。

 

 

飼ひ慣らすことはできぬと知りながら我が身のうちに住まはす鬼よ (yuifall)

死神でゐるのにも慣れ人間の屍肉を喰つて生き来し我は (yuifall)

 

 

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